文字組みについて振り返る
デザイナーとして就職したときに最初に大きな壁だったのがタイポグラフィでした。 チラシの文字組をしたのですが、それまで実践的なタイポグラフィをやったことがないため、いざ文字を組むと全くまとまらず、ベテランなら一時間で終わるようなことが1日かかってしまう状態でした。
文字組みは細部と全体のバランスを見ながら行う
なぜ文字を組むのが難しいかというと、チラシには文字以外にも写真や図が入ってきます。さらに文字はタイトル、見出し、本文、キャプションと使い分けが異なり、それぞれに最適な文字組が異なります。 これらを全体のバランスを見ながらレイアウトに収まるように文字間や行間を調整しなくてはなりません。
しかし、デザインを想定して原稿が用意されるとは限らないのでレイアウトに収まらない場合もあります。それでも、収まらないからといってその箇所だけ文字を小さくしたり行間を詰めてはいけません。(ほんとにどうしようもない時には最後の最後でやることもありますが) きれいな文字組やルールを守ったまま、雰囲気を崩さずに文字を組むこと。
これがいざやってみると大きな壁として立ちはだかりました。
あちらこちらを直していると何が正しくて、何が正しくないのかが分からなくなってしまいます。
この壁を乗り越えるためにはきれいな文字組についての知識や間隔を養う必要があります。
文字という単純な要素だけに何が美しいのか、何が正しいあり方なのか感覚を養うのは非常に困難でした。
なおかつ、美しい文字組みと同時にレイアウト全体のバランスを整えるという作業も同時に行う必要があります。
しかし、両方を同時にマスターすることは非常に難しいので、美しい文字組についてだけを集中して取り組みました。
文字を組みための基準を作る
美しい文字組みを行うに当たってまず行うのが「フォント」の選定です。当たり前のようですが、数多くフォントがある現代では初心者の方はフォントを選ぶのも大変だと思います。
紙媒体のデザインであれば、最初はモリサワの中ゴシック、太ゴシック、見出しゴシック、リュウミンの4種類でしょう。
モリサワフォントは有料のためハードルは高いですが文字として日本語本来のフォルムに近いのと、デザイン業界のスタンダードなのでここから始めるのがベストです。
ヒラギノや小塚、源ノ角ゴシックなどデジタルに合わせたフォントも多数登場し、実質無料で使えますが、これらのデジタルデバイスを意識したデザインのため紙に印刷したものをだと少し読みにくい傾向があります(特に文字数が多い本文組み)
実際に中ゴシックやリュウミンなどのフォントで文字を組むと文字ごとのぱらつきがあってそのママでは綺麗に組めません。
文字間の設定や細かなカーニングをしながら綺麗に文字が組みます。
またフォントごとに書体の形状が異なるため、フォントの癖や特徴も考慮します。日本語は全角と半角の文字があることや、縦書きの場合と横書きなど多様な文字環境ですので、しっかりと基準を身につけないと翻弄されてしまいますので、ここは何度も繰り返して身につけましょう。
慣れてくるとあらかじめ、「文字組み空き量設定」や「段落・文字スタイル」の作成を行い調整の手間を減らしていきます。
特にIndesignではかなり細かく「文字組み空き量設定」や「段落・文字スタイル」ができるため、しっかり設定すると調整が最小限ですみます。
全体のレイアウトを見ながら文字を組む。他者との調整も必要
その後は全体のバランスを見ながら文字を組む練習です。徐々に複雑なレイアウトに挑戦していくのが好ましいです。
ただ、実際の業務では自分のレベルに合わせて都合の良いレイアウトの仕事が発生するわけではありません。自分のレベルより難易度の高いものが出てくることも多々ありますので、頑張らないと仕事を終わらせることができません。
また、レイアウトに収まらない場合はライターさんに文字数を減らしてもらう相談など他者との協業が発生します。
その際には、ライターさんの修正工数やスケジュールなども計算して仕事を進めるといった流れになりますので、自分のタスク以外に他者の仕事も勘案できる余裕をもつようになりましょう。